雑に記す。

TCG以外の趣味の話題について、Twitterでは長すぎる場合にこちらに雑に記していきます。

一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう プレイ感想

『一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう』をクリアしましたので、感想を書きます。

以下ネタバレまみれです。ご注意を。

■終末系作品の分類について

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終末系作品といっても、個人的には大きな分類として2パターンあると思っている。

①終末世界の謎に着目したもの。

なぜ終末に至ったか、や、誰が意図してこの状況にあるのか、等。

終末を、ミステリーやSFの設定としてつかっている。

②哲学的な側面を描くために、終末という設定を選んだもの。

生や死といったテーマを、この世界の中で生きる人々の交流や感情の機微を踏まえて、描く、等。

 

本作は後者であり、その中でも登場人物はほぼ2人のみというのが特徴的だった。

結局、神様は誰なのか、なんでここまでの罰である必要があるのか、等はほぼ明かされない。

アサギリとキョーヤとのふれあいを元に、『生きる』とはなんなのかを感じ取る作品だ。

■理不尽だからこそ心が動かされる。

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キョーヤはアサギリのことを考えて、幸せを実感してもらうために、「幸せについて知らなければ苦しさを実感できない。罪を償っていることにならない」であったり、「休暇」を与えたりした。

そのキョーヤのアサギリへの優しさが、すべて、アサギリ自身を苦しめることにもなる展開が、あまりにつらかった。

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このシーンで泣きそうになった。

 

本作では、生きる、を描く上で、辛さ、を誤魔化さずに強烈すぎる形で読者に味あわせてくる作品であり、だからこそ魅力的だった。

■1番僕が心に"刺さった"シーン

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それはアサギリが"人間の汚さ"を実感したシーン。

キョーヤがアサギリと一緒に罪を体験してくれたことを知って、アサギリ自身が嬉しくかんじてしまった。『こんなことをかんじてしまう自分なんて、人間なんて、なんて汚いんだろう』、という展開は、人間の罪の清算を、『死の追体験』という形でしている本作だからこそ、伝えられたシーンであった。

■『死の追体験』という設定の活かし方

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罪の清算方法が凄いというのが、上記の「キョーヤが一緒に追体験したことによるキョーヤの秘密とアサギリの感じた汚さ」だけじゃないのが、本作の魅力。

それはラストシーン。

すなわち「キョーヤの死を、アサギリが追体験する」ラスト。

アサギリがキョーヤの死んだときの思いを直接感じ取ることによって、溢れたアサギリの気持ち。

これを知るためにアサギリは生きてきた。

この悲劇的かつ感動的なラストをみたとき、だから追体験という設定にしたのかと、思わずうなった。

■「いきましょう」について。「生きる」とは。

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ラストに驚いた理由がもう1つあって、それがタイトル。

「行きましょう」「逝きましょう」「生きましょう」であり、展開がその通りになっていたから(一緒に旅をして行く、一緒に死を追体験して逝く)、最後は2人でこの世界を生きていくとおもったんだよな。

しかし、キョーヤも哺乳類だから、キョーヤにも死んでもらってそれを追体験しなければ、アサギリの罪の清算は終わらない。なんて残酷なんだと。

でも、キョーヤはたしかに最後「死んだ」けど、本作では「生きる」は序盤から「辛くて苦しくて、楽しくて幸せ。 ・・・・・・それが全部あるのが、生きるって事だと思う」と提示されている。

一緒に辛くなり、一緒に苦しんで、一緒に楽しくなって、一緒に幸せを味わった。

キョーヤとアサギリは、一緒に「生きた」んだよなと実感した。

■エンディングについて

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エンディングは、人間の罪を清算し終えたアサギリ、地球に命が生まれていく様子をイラストだけで表したもの。

この絵だけで感じ取るのも楽しいんだけど、作者がこのエンディングにあわせたアサギリのセリフを出してくれてるので、これを読むとさらに楽しめるので、本作をクリアした人は必見。

 

water-phoenix.com

 

■さいごに

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自分は哲学的なテーマの作品が大好きなので、また美しいビターエンドが大好物なので、本作はすごく刺さりました。

短いながらCGも沢山あり、インパクトがあるCGも多く、重いテーマでもプレイしてて飽きが来ないのも素晴らしかったです。

 

こういう短い時間で濃密な心震わされる体験を味わえるような、ロープラやミドルプライスのノベルゲームを、これからも沢山やりたい。

おわり。

 

『Z.A.T.O. // I Love the World and Everything In It』プレイ感想

ZatoというSteamで配信されているフリーゲームを、有志により配布されている日本語化MODを当てて、プレイしたので、感想を書きます。

ストーリー

1986年、ソ連。閉鎖都市「ヴォルクタ-5」でイーラが失踪した時、誰一人として気にとめる者はいなかった――ただ一人、物静かなのけ者の少女、アーシャを除いては。イーラの失踪に隠された謎を解き明かし、宇宙へ向けて無線信号を発信せよ。そして、なぜ一羽の鳥が窓の外を通り過ぎていくのか、その理由を知るのだ。

 

読んでいて心がざわざわした、哲学ビジュアルノベルでした。

この時代に、ここまで「考えさせられる読後感」を味わえる作品に出会えて、うれしかったです。

以下、ネタバレあり。また、本作は、深い世界観で読者ごとに感じ方や考察が変わるような作品であったため、「僕はこの作品を、こう捉えたよ」という”妄想”もいろいろ含まれますので、ご了承ください。

〇Ep1~Ep2における”アーシャの心情描写の吸引性”が好き!

本作は、物語の大半の語り手である”アーシャ”の内心の語りが、魅力的な作品だ。

「気になっている人の顔色を伺う」「友人の態度に一喜一憂する」「コミュニケーションの途中で内省がはじまる」「自分で自分のことを退屈に感じる」

日常生活において、コミュニケーションでごちゃごちゃと考えてしまい、足踏みしてしまう人間ほど、このアーシャの気持ちの表現は、刺さって離れない。自分にはドストライクだった。

こういう心情表現が、病的でざわざわする文もあれば、詩的で美しくて惚れてしまいそうな文もあれば、狂気的でニヤけてしまう文もある。いろんな方向性で、吸引力が高い。

そして、本作で自分が凄いと思うのが、アーシャがこのように普段から「考えすぎ」であることで、アーシャが述べている「世界観」についてのぶっとんだ発言に対しても、「不思議ちゃん」や「電波」な発言だと思ってしまったことだ。

だからこそ、このアーシャが序盤から語っていた世界についての発言が、「アーシャの妄想」ではなく「ある種の事実」であったとわかったときの、衝撃よ。

 

〇ビジュアルノベルとしての”神秘的・狂気的な演出”が好き!

(「美しいものに触れると言葉ではなくため息が出る」というが、このシーンでまさにそれを味わった。『あまりに美しすぎて、泣き出してしまいそうで。』)

本作は、はじまりの段階から、画面構成に凝っていた。テキストボックスの外に雪が降り、静けさを感じるイラストをみながら、一文ずつ哲学な文章を読み進めていく感覚が、気持ちよかった。

読み進めるごとに、テキストボックスの枠にとらわれなくなったり、文が一気に大量に表示されたり、表示される速度がゆっくりになったりなど、「読書感を操作する工夫」がたくさん施されているノベルゲームだった。

この普段の構成がそもそもこのようにしんしんと美しく静かなつくりをしているからこそ、画面上派手な演出が飛び込んできたときに、引き込まれて虜になるシーンが多かった。

上記であげた「これ以上はーーーー」のシーンは、結晶を起点に画面外にどんどんギザギザの色のパターンが浸食していき、比喩としてドラッグをやってるんじゃねえかっていう感覚を味わえる神秘的演出だった。

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Xで、このシーンのスクショのポストが軽くバズっていたのをみたことがあるが、このインパクトで本作に興味をもった人もおおいんじゃなかろうか。

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この工場の演出も鳥肌モンだったね。

てか、日本語でこの表現方法での翻訳した方、凄すぎないか?本当にありがとうございます。

〇Ep2で明かされる世界の秘密”コード”に”構造主義”を当てはめて思考する

Ep2終盤にて、このセカイのすべての事象は「コード」によって定まっていることが判明する。イーラやマリーナが「おかしくなった」のは、このコードを理解できるようになってしまい、いままでの世界への認識が否定されてしまったからである。

この「セカイの真実」について、「構造主義」に当てはめて理解しているレビューがあり、大変参考になった。

人間は自由な主体であるという実存主義と、人間もまた言語や社会や文化というシステムのなかで作られる構造主義。そして構造主義で考えた場合の問題点を指摘し構造そのものの不安定さや変化をついたポスト構造主義。の一連の流れがある。

しかし、この物語における「コード」の存在は、構造主義の問題点であった「絶対的な構造なんてないのではないか」の疑を否定し、社会システムといった枠組みが変わるわかりにくい構造とは異なる、究極で完璧な構造に他ならない。

よって、このコードを認めることは、ポスト構造主義すら否定することとなり、当然人間の自由意思を完全に棄却する話なわけだ。

現実の構造主義においても、構造に組み込まれている諦念から政治・社会参画への冷笑が起きていたと考えると、その構造がより強固な形で真であるとなったときの恐怖は、どれほどのものなのだろうか。

そして、それを直視しても、自分が文字数の羅列であると正しく自覚しているにも関わらずそれをありのまま受け入れているアーシャの異質さたるや。

 

〇コードのハックと、”歪み”と”直線”

そして、上記の「世界の構造」がはっきりしたからには、それをハックしようとする動きが出るのは当然である。

ZATOすなわちЗАТОは、化学兵器開発等の国家機密に関する実験目的のための閉鎖都市を表す言葉であるが、その閉鎖都市の1つであるヴォルクタ5の実験目的が、この「コード」である。

コードのハックによって、通常の物理現象を超えた事象を実現できることは、マリーナの「本の移動」によっても、証明されている。

この都市そのものがコードの実験のための都市であるから、町の人たちのなかでコードの目視が発症してしまう人がいたし、レフのようにこの実験をしている研究者はそのコードから目をそらす薬を所持していた。

 

しかし、世界の構造であるコードを、ハックする行為は、世界そのものに歪みを生じさせる。

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本作では、世界について、線で捉え、「歪み」と「直線」という言葉をよく使っていたのが印象的だった。

世界の完璧な一本の直線のなかに、線の震えである歪みは取り込まれて、逸脱は消失する。

ヴォウクタ5は存在そのものが世界にとっての罪である歪みを生じさせた。世界が癒えるためには、この街ごと消えるしかないのだ。

 

〇Ep2結末のイーラの消失とアーシャの望み

イーラは、コードを見続けたことによって、自由意思が否定され、廃人となってしまった。

そんなイーラが「戻ってきて」アーシャを見たあと、消失した出来事について。

アーシャは当初、イーラが消えたことについては、イーラ自身が経験したことによる、イーラ自身が歪みを及ぼしたことによる、世界の修正だ、と述べた。

それに対しレフは、「あれは彼女に対する反応ではない」「一人の人間の引き起こす歪みなんて、研究施設の生み出すそれと比較すれば誤差の範囲でしかない」と述べており、否定している。

では、イーラはなぜ消失したのか?

レフの文脈では、街全体が消失に向かっており、そのなかの一部であると解するのが妥当であろうが、「自分を取り戻したイーラだけ街より先に消える」のは不自然ではないか。

自分は、イーラが消えた原因は、アーシャによるものであると考えている。

イーラは、イーラ自身が望んだから意思を取り戻したのではない。アーシャが「イーラが私を見る」ことを望んだから、イーラが戻ってアーシャを見たのだ。

これは、アーシャによるコードのハックによる能力によって成立した事象であり、それによって起こった歪みで、イーラが消失したのだと考えている。

ただ、この理屈を成立させるためには、「一個人の与える歪みの影響は大したことがない」に対し、「アーシャの及ぼす歪みは多大である」と考える必要があるが、きちんとEp3にてアーシャには「自分の思う事物を具現化できる」ことが明かされている。

 

〇アーシャとトーシャ。「トーシャがいなくなったことによる空っぽ」を「埋めた」とは。

トーシャはアーシャが生み出した「歪み」である。

しかし、アーシャはトーシャと引き離されてしまった。その原因が、この研究センターである。

Ep3を読み解くと、研究センターの者は、アーシャに巨大な歪みを引き起こす潜在能力があるとし、また、アーシャの願いによって生まれた『トーシャ』と、この研究センターによる歪みは、性質が違うという。

では、そんなアーシャは一体なにものなのか。

自分は、アーシャはこの街での実験体の1つではなく、むしろ逆だと思っている。

アーシャが生み出した純粋な願いの歪みのトーシャ。その異常さに目をつけた研究者が、アーシャに対する研究を研究センターにてスタートした。その研究結果が、計算による歪みとこのヴォルクタ5の街。の順序。

トーシャを失ったアーシャは、その「空っぽ」「空白」を「素敵なもので埋めつくそう」とした。

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その空白を埋めるために、アーシャは自分自身を測定基準とした。比較するため『並』が必要だったから。

で、ここからは自分の妄想となるわけだが、そのトーシャを失ったことによって埋めた成果が、この街やこの街の人物なのではないか?この街や人物そのものが、アーシャによる具現化の成果ではないか? そしてアーシャは埋める作業のために、基準として、記憶を失った平凡な自分を街に配置する必要があったのではないか?

この「空っぽを埋める」関係の文章と、Ep3での施設内でのトーシャとの会話を踏まえると、自分はそう考えてしまう。

街への違和感として、自分はイーラの部屋の配置がアーシャと全く同じなことに強烈な違和感があった。

またZ.A.T.O. - Digital Art Pack内のトーシャの記述にて、トーシャのポーズや表情や服装は、このZatoの各登場人物と似ている・模倣している・ごちゃまぜにしている、と記載されている。

こう考えると、トーシャという一番素敵なものを失ったアーシャが、トーシャと一部ずつ似ている人物を、作り上げて配置した、と妄想できないだろうか。

アーシャが冒頭から、イーラに向けた重すぎるベクトルがあったのも、それがゆえんではないだろうか。

 

〇『愛』と”ヨハネの手紙”

本作の最後は、「わたし」が世界に向けて愛を届けて、おわる。

本作の冒頭では、「宇宙は、成熟する過程で、だれかに認識されたいと願うようになった」「宇宙は自らの無限に更なる値を加えるため、新しく有限の観測者ーー知的生命体を作り出した」とある。

つまり、愛をこのセカイに向けて叫ぶ行為は、認識しているというラブコールであり、このセカイの本懐である。セカイを歪めた街の物語の行く末として、セカイが望む愛を伝えるのは結末として綺麗だ。

また、本作の副題は”I Love the World and Everything In It.”であるが、これはヨハネの手紙2:15の”Do not love the world or anything in the world."からの引用であると思われる。

この『世も世にあるものも、愛してはいけません』での「世」は、神が作った自然界ではなく、神に背を向け人間が作り上げた欲と権力の構造、不完全な世界を指す。

それを引用する形での、『世も、世にあるものも、私は愛する』は、私はそんな愛してはならないと言われた不完全な世界を、それでも愛する、と読める。

ヨハネの手紙は、イエスの弟子ヨハネが、キリスト教コミュニティであるすなわち人間に向けて書いたものであり、その人間へのメッセージとある種反対の立場で愛を世界に向けるというのは、よもや神に近しい立場であるからこそできる世界への愛の表現なのではないだろうか。

(アーシャは、自分に降りかかる理不尽なイジメめいたことまで受け入れ、そしてコードまで踏まえ、世界は完璧であり、美しい、世界に愛を届けたいと何度もいっている。

そんなアーシャだからこそ、愛するなと言われた不完全な世界もひっくるめて、世界を愛するということに、説得力がある。)

ここの解釈が非常に難しいが、これを踏まえて世界に愛を届けたと考えると、アーシャの凄さを感じるラストシーンであった。

(いままでテキストボックスの外で、上から下にしんしんと降っていた雪の描写に対比する形で、地上から宇宙へ光が昇っていく様子は、本当に美しかったな)

 

〇さいごに

本作を終えた直後に感じた読後感は、はじめて旧劇エヴァを見終えたときの感覚と、通ずるものがあった。

「理解はし切れてない。でも、とんでもないものを自分はみたぞ。そして、それを自分なりに理解してみたい。」この欲求だ。

考察として間違っていることも書いているだろうけど、でもぼくはこう思ったんだ。考えていて楽しかったな。

やり終えたあとに、こんな引き込まれる感覚を味わう作品に、この令和に出会えるなんて、感謝の気持ちでいっぱいだ。

I LOVE YOU. I LOVE YOU. I LOVE YOU.

ディメンション凸ラバース!! (CRYSTALiA) プレイ感想

CRYSTALiAさん最新作、ディメンション凸ラバース!!の感想記事となります。

ネタバレ多数、好きな点だけでなく、気になった点もふくめて思ったことを素直に書いていきますので、ご注意ください。

 

★好きなとこ

〇ド派手すぎる能力を、きちんと頭脳を活かして描いてるところが最高。

本作は、少年漫画顔負けの熱い戦闘描写が魅力の大きな1つだった。

能力バトルもののなかでも、最序盤から能力が「強すぎる」「派手すぎる」「トリッキーすぎる」ものがバンバンでており、これらの能力をきちんと活かして物語を描くなんて大変そ~と思ってたんだが、その期待のハードルを越えてくるものが多く、ワクワクしたな。

とくに、能力を柔軟に解釈することによる拡張性が、キーであったと思う。

例えば

・薔薇の盟約は条件である「傷つく」では「友達が傷ついたら私だって傷つきます」と傷つくの解釈を広くとったところ。

・ダンスノーツの「吹き飛ばす」では、森道の中に隠れていたマシューを吹き飛ばすところ。

・瓦礫を見ろの「停止」では、肉体にかかる現実性の変動のみを停止したところ。

・そしてなにより赤刀。赤刀そのものでは相手を傷つけることができないが、上記画像のもそうだけど、拡張性の面では特に広く、ありとあらゆるでたらめな挙動が許されていたと思う。戦闘中に主人公の生首を蹴っ飛ばすシーンおもろかったな。

鮮血に変える、に関しても、「粒子間を切り離す」ことによるもの、と説明をされて納得はした。主人公の手紙と祈りと組み合わせることによる図書館への侵入は、能力と能力の掛け合わせとしても見事で興奮したね。

このように、能力で「なるほど!」と思わされるところが多く、それに伴って、戦闘においても頭脳戦が光るものが多かった。

この作品の戦闘は、パッションと頭脳のバランスが絶妙だったと思う。

個人的にこの作品で思わず「すげぇ」と思った戦闘TOP3

3位

桧木VSマシュー(桜ルート)

マシューを倒すための桧木の覚悟。

そして、気づいたときには、もう死に戻り対策も含めて、交えることすらなく戦闘は終わっていた、というのは、魔術師の大家崩月家の長としてこれ以上ないカッコよさだった。

 

2位

華淡、回転木馬(グランドルート)

まず、華淡ルートにおける回転木馬が好き。「切り離す」を数十万年の時を過ごしたことにより、第3の能力として、「時間を切り離せるようになった」というのが、ただでさえハチャメチャであった赤刀の最終到達点として最高だった。

そして、グランドで塊が奪われた際、「いつだって。絶望的な状況に笑って切り込むのが、海漫華淡という少女だった」で真っ先に華淡が塊のために飛び出し、大獄と協力をして、回転木馬を再現して宇宙の時間をバラバラにして戻す。

アッチイ~~~~~~

 

1位

塊VS清楓、ダンスノーツによる手紙と祈りの発射(水仙ルート)

この「手紙と祈り」を、能力として活かすんじゃなく、ただのペンとして、飛び道具としてダンスノーツで射出した瞬間、まじで震えた。

手紙と祈りは、能力としてあまりに破格の性能をしていたと思う。その利便性にみあうほどの、能力面での魅力的な戦闘は、全戦闘を通して正直なかったなと思う。

しかし、能力が凄すぎるからこそ、能力じゃなくただのペンとして使ったこのシーンをみたときに、「やられたわ」と思わずうなった。

 

〇Hシーンまで含めたテンポの良さ

非常にサクサクと読めるテンポ感が本作の誉め言葉としてよく見受けられるが、個人的にその良さを一番実感したのが、Hシーン。

エロゲあるあるの「Hシーン」いりますか問題。

自分は、シナリオに集中しているとき、長すぎるHシーンが挟まると、集中力が途切れてしまうので、ぶっちゃけ飛ばして後で見ることがある(すまん)。

でも、本作は1つ1つのHシーンが、短いが濃密であり、シナリオのアツイシーンでHが挟まったとしても、(時間も短いことがわかってるし、内容も超エロイから)「飛ばして~」って思うことが1つもなかったのが個人的にすごく評価が高い。

 

★各ルート感想

攻略順は、ディレクターおすすめ攻略順であった

華淡→水仙→ソフィア→桜→グランド

でやったが、ぶっちゃけた話をいうと、この順でやったことをすごく後悔している。

たしかに、ソフィアのエピローグにはシステム大獄の話がちょろっとでてきたりなど、シナリオの整合性で鑑みると、このおすすめ順でやることが一番わかりやすいのだと思う。

華淡は、全ルートのなかで、一番スケールがぶっとんでいるシナリオだった。自分は好きだった箇所に、第一に能力・戦闘について述べるぐらい、本作ではそこが一番刺さった要素だったわけだ。特に能力の拡張性という点に関しては、華淡ルートのはっちゃけ具合は他を抜きんでている。そんな自分にとっては、華淡からやったことで、他ルートのその要素の魅力が、比較の結果薄まったことに、萎えている。

また、グランドルート冒頭の、本作のキャッチコピー「世界を救ってほしいんだ」が「カイマンカタン」である興奮を、華淡ルートを終えたあとすぐに味わえたほうが、より興奮できたとも思う。

(推奨攻略順でやって後悔したのなんてはじめてだ。)

もし記憶を消してもう一度この作品ができるなら、

水仙→ソフィア→桜→華淡→グランドの順でやると思う。

 

〇華淡

・華淡は、反現実や怪獣に対し、敵対や(利害関係による)手を組むではなく、「手を差し伸べて、友達になれる」ヒロイン。

だからこそ主人公も「手を差し伸べることができるんだ」と大獄と友達になるし、魔術を科学にし反現実への対抗手段を世界のみんなに差し伸べれるようにした。

華淡ルートは何度もいってる通り、とにかく規模がぶっとんでる話であるが、そのなかでも、上記のストーリーの軸がきちんと一本通っているのが、美しかった

・「無限の世界」での話は、いわゆる5億年ボタン問題に通ずる思考実験に近いものがあり、そのなかで文明を1から作る、はあるあるなわけだけど、文明発達や脱出時のコールドスリープ方法が、プラチナ化+分割による合体待ちなのが、お互いのBEGを掛け合わせた方法なのが、特にGOOD。脱出方法自体についてはだいぶパッションよりであり、そりゃ疑問は残るけど、ここまでスケールがでかいと、気にならなくなる。

・知識の探求ばっかしてた主人公がヒロインとの幸せを望むということについて、一番言語化面で、ストンと納得できたのが個人的にはこのルートだったように感じる。すなわち、「知識をずっと求めていたのに、ヒロインと出会ったことで、好きな人との日々の幸せということすら自分は知らなかったということを知る」というもの。

・BEGの覚醒の、赤刀の回転木馬の好きさ加減は、すでに語った通り。それに加え、ダンスノーツの「反現実性の反射」も、好き。というのも、ダンスノーツは桧木の「守りたい」の想いから生まれたBEGであり、この反現実性の反射はこの守りたいという意思をきちんと引き継いだアップデートであるから。

 

〇水仙

・個人的に、渋い戦闘をたくさんみれたことが好きだったルート。

・戦闘に関して、一番好きな戦闘である塊VS清楓に関してはすでに述べたとおりであるが、桜&ソフィアVS桧木による「能力の相性」もすげーよかったな。桜のBEGの単体性能はあまりにすごいわけだけど、戦闘においては相性はどうしてもあるわけで、スペックだけが勝負の決め手じゃない、というのを描いてくれるのは能力バトルものとして大好きだ。

・クローンに関しては、魔術師ということもありどうしても橙子を想起してしまうが、自分のクローンだけじゃなく、ほかの家族の培養器もあったところが、清楓だからこそだなと思った。

・クローンでおわりがない相手に対し、扉の怪獣を利用する、という解決策もお気に入り。

・個人的に一番好きなキャラは清楓かもしれない。魔術師が目指す真実への到達とはまた違う、「自分が笑う」を突き詰めるスタンス。そして「本物の清楓」の家族に向けた笑顔。たどり着いたじゃねえか。

・水仙のルートは、ギャグの面でもお気に入りのものが多い。

「出られない部屋」を出したとき「さすがに卑怯だろ笑」と思ってしまった。

その明らかにギャグな描写から入ったのに、この怪獣によって、

①「水仙の望みで生まれた塊が、迷いなく自分を殺して水仙を外に出す」を描いて主人公のかっけぇところを見せたり

②前述のとおり清楓との戦闘の締めとしても重要な役割も果たさせたり

と、シナリオでの活用の仕方がすごかったよな。

・このルートでは、清風がなぜ羽鳥を逃がしたのかや、清風の彼女と羽鳥の関係などは語られず、グランドで語ることになる。

 

〇ソフィア

・ソフィアが「かしまさん」の件で主人公の秘密を知ったことを、あえて隠していて、それがソフィアルートのキーになることはわかりきってる流れだったけど、それを明かすときのセリフが大好きなんだよな。

『なんで助けてって言えないのよ』と主人公が打ち明けることをずっと待っていた。

そのなかで『舐めている』『あなたは、私の誇りを、傷つけた』と、ソフィアの覚悟と信念を踏まえた上で、主人公が明かしてくれなかったことの悲しさを述べるこの一連のセリフは、名セリフだったな。

上記CGは、この作品でのヒロインの発言のなかで、一番心つかまれたものだった。

・物語の後半では、『助けて』を言えた主人公と、言えなかった羽鳥。の構図となり、そんな羽鳥に『助けて』を言わせたストーリーだった。

橙の心臓の奪取については、取り替えっ子強すぎだろと思ったが、橙の心臓が教団の目的上必要というだけでなく、心臓を奪うことで主人公が崩月家から解放されるため、主人公は羽鳥に救われていた、という構図が綺麗。

この友情による助け合いが魅力的なルートだったから、最後の異世界行きを、主人公と羽鳥がそれぞれお互いを助け合って、のくだりが染みたな。

最後の藍の心臓の返却での一幕。主人公の心臓は羽鳥と変えられてて、羽鳥に橙の心臓があったはずが、そのあといつの間にか出されて墓守が異世界にもってってたというの、ここで明かすまで知らんかった。じゃあ羽鳥はかわりに人工心臓いれたり、墓守と心臓交換してたってこと? 

 

〇桜

・このルートで一番好きなのは、このくだり。

主人公も桜も、いままで自分の意思で決めるということがない点で似ている2人だった。そんな2人が唯一自分たちでつかみ取ったのが、この愛だと思ってた。それなのにその「出会いもしくまれていた」というのが、今ルートの重すぎポイント。

しかし「自分たちでつかんだ物が、自分の意思じゃなかった」という絶望を、この言葉が消してくれる。ここでもう1段階出来事をつくらず、即座に桜がこの言葉を投げかけてくれるからこそ、桜が最強たる所以を感じた。

 

・中盤までの、桜との日常会話の語句が好きなものが多い。

上記スクショであったり、『猫が常駐する』であったり、桜とこの主人公のコミュニケーションだから出る独特の語彙センスが、癖になる。

 

・後半は桧木の人となりが詳細に明かされる。桧木が「いかに魔術師らしくないか」がわかるたびに、桧木に惹かれる自分がいた。

・桧木が主人公を無理に仲間にしなかった箇所に関しては、パッションでは納得するけど、冷静に理屈としてみたときには個人的にはひっかかるポイントだった。

好奇心だけで行動してたときなら主人公は桧木について過去に一緒にいってた。でも過去に飛んで全部やり直すのは、『友を、家族を、恋人を。踏みつぶせる人間でないと、ここから先には行けぬのだ』。

うーーーん。「愛を知らされて、それでも信念のために愛を踏みつぶせる人間じゃないとだめ」というのが、パパによるセリフと感情だけの提示であって、理屈上、好奇心だけの主人公と過去に飛べばいいじゃんとしか思えない。

 

・もともと「白の心臓の破壊」が目標で地下に向かったが、できそうにないことが判明したので、あきらめて、その後パパとの戦闘となり、ルートがおわる。

この列車周りの解決はグランドでの問題となるため、仕方がないわけだが、このルートでその後の白の心臓や列車についての話が特段なにも出さないままエピソードが終わったのが、だいぶまとまりがなく、グランドの下地ということを一番感じるルートだったなど、個人的には不満に感じた。人間の魅力はかなり出まくっていただけに、シナリオ進行として納得いかなかった。

 

個別ルートを好きな順にならべると、

華淡>水仙>>ソフィア>桜

 

〇グランド

・カイマンカタンからの接触で物語がはじまるのは、わくわくが凄かったな。こんな方向性の「強くてニューゲーム」なやり方、ありなんだ。大好きです。

サックサクとストーリーが進行していくのも、主眼は最終局面なんだから、こういうグランドの描き方もアリだよなと。

・いままで敵サイドに回ってた人たちも含め、全員で共闘!は、まさに王道。こういうのを見たかったんだよ、を見せてくれたグランドだったな。

・ただ黒車掌の正体は、もう少しわかりにくくしててほしかった。声と見た目で、桜に関係するものと最初からわかりきってたから。別次元の桜、というのがもっとわかりにくい状態で明かされてたら、正体が判明するシーンで脳汁が出ただろうに、もったいないと思ってしまった。

 

〇さいごに

本作はいい意味でも悪い意味でも優等生な作品だったなと感じる。

キャラゲーの魅力も、エロの魅力も、アクションシーンの魅力も、シナリオの要素も。こういう「ノベルゲームのありとあらゆる夢と詰め込んで、しかもテンポよくまとめ上げた」という点で素晴らしい作品ではあるんだが、そのすべての要素が70~85点だったな、と終わったあと感じた作品だった。

不快になるところがない、サクサク最後まで読めた。

ただ、「1年後には好きな戦闘以外のことは自分は忘れてそうだな」というのが率直な感想となる。

(要素がたくさんあるということは、人によって必ず刺さるポイントがある作品ということでもあり、万人に受け入れられる点で名作である。自分は、本作では能力・戦闘のところが一番ビビっときた)

 

あとは、これはこちまつの時からも思ってたけど、「それ言いたいだけだろ」系のものが多すぎる。たとえば「23種類の眷属化」を出しても主人公がそれを絡めてこなかったり。なにより専門用語。一例として、容器に「チェンバー」という名称をつけてだしたのに、このゲームでの登場はたしかそれ1回きり。

こういう世界観ねりまくりで、いろいろ設定や用語を出したいぜ!というパッション自体は好きなんだが、せめて出すからには物語上その用語を披露する必要があって、その出した用語を読者に覚えたいと思わせてくれとなった。

ただ、こちまつのときはそれが原因で読むのがつらかったんだけど、このゲームではTIPSでの補足がUIも含め丁寧で読み進めやすくはしてくれてたから、気にはなっても読み進める手を止めることにはならなかったのが、偉大だった。世界観が共通していることもあって、このゲームを楽しく終えることができた今なら、こちまつの読書体験も初見時とは変わってきそうと思うので、こちまつを読むのが楽しみになった。

 

気になった点も素直に書いたけど、ずっとやってて楽しかったな~となるいい作品だった。

Neko Hackerさんの曲が好きで、それがきっかけで本作を知ったので、出会いに感謝だ。

youtu.be

youtu.be

おわり。

ハピメア REGRET END(Purple software) 感想

Purple softwareさんのハピメア RE VERの感想です。 

「これは甘くて幸せな悪い夢のお話」

以下ネタバレありで感想を。

今回は、Trueの内容を最初に話さないと、各ルートの感想についても話しにくいなと思ったので、しょっぱなから重要なネタバレもあります。気を付けてください。

すごいなと思ったところ

夢と現実がごちゃまぜになることによる、足場の揺らぐ日常

・テーマが「夢」であることがフル活用されていて、作品を進めるごとに、登場人物だけでなく、読者も「この内容が、夢なのか、現実なのか、わからない」という体験を味わうことになる。日常の会話のなかでも油断ができるシーンがなく、常に不安定な気持ちで読み進める体験ができるのが、面白すぎた。

この、夢と現実がごちゃまぜになるというのが、「夢」か「現実」かの2択を考えるだけじゃないのも、新しかった。

夢か、現実か、いままで現実だと思っていたところが夢で夢だと思っていたのが現実なのか、夢に浸食されている現実なのか、夢の夢なのか、夢といっても誰の望んでいる夢なのかetc・・・

本作は日常シーンが少し冗長気味であると感じたが、それは必要な冗長さである。これによって、夢と現実の違いがどんどんわかりにくくなっていってるので。

たとえHシーンのときでも、ギャグっぽい夢丸出しのときでも、つねに油断せず、考察しながら読むこの難解さは、ずっと肌に気持ち悪さが張り付いているプレイ体験となっており、であるからこそ魅力だった。

・また、本作の演出面において、夢と現実の気持ち悪さを出す上で、うますぎるなと感じるところが多々あった。本作はCGもとても豪華で、イベントごとの1枚絵が素晴らしすぎるのだが、「そうじゃない日常の立ち絵のなかでの演出」にも、光るものが多かった。

ノベルゲームでの立ち絵での会話の進行って、まさに「日常」なのに、そこで不穏なものが当たり前に映っていたり、また「くるっと回る、崩れる、色が反転する」などの演出効果が入ったりするからこそ、「日常」を信じられなくなっていった。

・そして、その今が夢なのか、現実なのか、を共通も各ヒロインのルートでも考えさせられたあとに最後にやったTrueにて

「いままでやっていたあなたの全ルートでのゲーム体験は、現実だとされていたところも、すべてひっくるめて、冒頭からの一夜の夢ですよ」

と突き付けられたのは、凄すぎて、もはや気持ち悪かった(誉め言葉)。

Trueエンドが、要素を取り出すと、尖りすぎてる

・自分はTrueエンドをみて、このシナリオに感動したし、本当にやってよかったと思っているが、あまりに要素が尖りすぎているだろと思う。

ノベルゲームで、主人公が各ルートごとにいろんなヒロインを攻略するということを、メタ的に利用する作品はたしかにある。パラレルワールドやタイムスリップなど。

・この作品では、ヒロインとつきあえたルートもバッドエンドも含めてすべて夢のなかで繰り返させられていた、というのがTrueで明かされるが、これって「いままでのヒロインとの話を、いってしまえばちゃぶ台返しして、踏み台にするようなもの」だ。ヒロインの1人が上記のようなことを言うTrueって異質すぎないか???(このすべての別√のヒロインたちが、これを自覚し踏まえた上で、協力してくれる動機がきちんとあり成り立っているからこそ、ひどい話とはならず、神ENDなのだ)

・無論、作中では、各ルートで、目覚めたその先の、読者がみた幸せな未来というのは、パラレルワールドとしてあるかもしれないと述べられているし、ここで弥生が「目を覚ました先」を知らない以上は、各ルートの幸せなエンドは「たしかににある」と解するのが自然ではあるが。

(ただ、各ヒロインとのエンドって、時間経過の点から考えると、どうしても疑問だ。個人的にはこのエンドも含めてすべて夢だったにしてくれた方が、感情は抜きとして理屈としては納得がしやすく、いっそのこと好きだったな。Trueの解決方法を考えてみれば、夢からの現実への影響を及ぼすことができてるわけだから、ありえなくはないのか?)

・そして、シナリオ上、ここで主人公が思いを寄せている有栖そのものを、いわば消すことになるというところも、尖っている。(「有栖は有子の希望の姿」であり「どっちもお前だ!消えるわけじゃない!」とし、最後有子のなかに有栖がいることが瞳の色からもわかる感動的なエンドとなるわけだが。)

・で、希望をもった有子と出会いなおしてのエンドであるため、このエンドではどのヒロインともある種結ばれてないというのも尖っているんだ(だからこそ、咲の、下記のセリフも活きてくる)

・こうした要素をあげてみると、このTrueが「ヒロインを攻略するというテイストのノベルゲーム」において、いかにチャレンジングなことをしているかがよくわかる。

そして、ここですごいのは、こんな尖ってる尖ってるいってるのに、有栖周りの伏線回収の納得感と、物語として面白すぎるし、感動するから、このエンドでよかったと思うことなんだよな。

だからこそ、ハピメアは名作で、この会社の代表作と呼ぶ人が多いんだと思い知らされた。

すべての√で魅惑的すぎる舞亜という存在

・何よりも舞亜が、とーーーにかく、かわいすぎる。

どのヒロインの√やってても、こいつがでるたびニマニマがとまらんかった。

舞亜のような「依存したくなるヒロイン」「魅惑的な存在」がもう性癖。

甘くて幸せな悪い夢、をそのまま体現した言動。そら主人公もずっとこいつにとらわれるわ。

で、こいつがまさにチェシャ猫のように物語をかき乱すだけでうれしかったのに、Trueで舞亜がどんな思いでずっと主人公たちの終わらない繰り返される夢をみてたのかをしって、もう愛。

各ルート感想

弥生→景子→咲→舞亜→有栖(True)

(BADや各種ノーマルはかかない)

弥生

・自分にも周りにも嘘をつき、幸せな夢に逃げるところまでも同じ2人だからこそ、傷を舐めあえるし、前を向けた話だったなと。

・このルートで好きなところは2つある。

・まず1つめは「夢に逃げる、というのは間違っていることなのだろうか」という論点にとても向き合ったところ。

夢にとらわれた主人公に、愛を教えてくれて覚まさせてくれたヒロインが、主人公への愛を自覚してしまったことで将来の別れがいやで夢に堕ちる、という構図。

2人で一緒に夢に逃げたら、それが一番幸せなのではないか?という命題。

これにより、2人とも、夢に逃げることの意味をしっている。感情だけで夢に逃げてはいけないと頭ごなしで非難をする立場でもない。

だから、『迷うよ。弥生が本当に間違っているのか、俺には分からないんだから』『私だって、本当に正しいかどうか分からないわ。だけど、これは今私が出来る事だもの』というやり取りのセリフが出てくるし、このセリフが好きだ。

そのうえで、このルートでは、弥生による夢の構造がやり直しであるため、2人の望みのズレが起きることで、バラバラになるという問題があり、逃げ続けるのはだめという動機になった。さらに、管理者は夢が夢であることにいつか気づいてしまい、いつかの自分のように壊れてしまうから、そんな弥生をみたくないから、夢に逃がさない、と決断をした。

この論点に向き合ったから√があったからこそ、Trueでの主人公があったということも含め、この「夢に逃げるのは本当にだめなのか」を真正面から向き合ったこのルートがすきだ。

・そして、2つめは、やっぱりここよ。

主人公が弥生に執着してる理由である弥生との思い出を消すことで、弥生は1人で主人公と幸せな夢を見続けられる、とする行動の構図のあまりの切なさ。

だけど主人公は弥生と一番最初に出会った弥生が仮面をかぶる前の姿も覚えててそこで弥生を捕まえたシーンの気持ちよさ。

弥生が「自分にも周りにもウソをつくようになった」理由。

これら全部がつまってるこの「最初の思い出」のシーン、至高だろ。

 

・個人的には、咲、景子、弥生、のなかでは上記の理由で弥生√が一番好きだな。

景子

・父との向き合い方が、2度とも夢ベースなのが残念だった。

せっかくなら現実で景子と景子父と主人公が向き合って話あう、という展開がみたかった。

というのも、読者がみてる景子父像は、すべて景子の父へのイメージが強く反映された、イメージの誇張が入った父だからだ。

無論、「景子にこう思われてしまっている」ということではあるが、それを2回もやる必要があったのか?と思ってしまう。その夢からさめたあとに、夢での教訓をもちかえって景子と不器用ながらもコミュニケーションをとろうとしはじめたのをみて、むしろこの父なら、現実で景子がぶつかってればきちんと意思疎通できる父だったんじゃないかと思ってしまったな。(ただTrueを踏まえて考えると、現実で向き合えといっても、その現実は一夜の夢の最中になるから、ややこしくなるな。夢での脚色が強い配役にそった父親じゃない、等身大の父と、向き合ってほしかったの意)

・それはそれとして、景子が『誰かに与えて貰った幸せになんて、興味がない』というスタンスを一貫していたのは、かっこよかったし、不思議の国のアリスモチーフだけじゃなく、ピーターパンとかもだしてくるのにはワクワクした。

・なーによりこの舞亜のチクタクワニの締めは、至高。

 

咲

・「引き金を引いた」のミスリードが秀悦の一言。

有栖が出てこなくなったことなども含め、舞亜をうって夢がさめて現実になったんだと思ってて、ガチで騙された。

いままで主人公にべったりだった咲の姿をさんざんみており、咲が舞亜に対して言うある種嫉妬のようなセリフすべてに説得力があったから、お別れに真実性があった。

→でも、その実、主人公と同じほど咲も舞亜に依存していたから、お別れができなかった→この依存関係は、3人による共依存である→だからこそ主人公と咲が一緒にお別れを言わなきゃいわない、というストーリー展開が、依存のテーマが色濃くでてて好き。

・ずっと舞亜のかわりに妹になったという話はしてたが、それが自分の行動に対しても「舞亜だったらこうするだろう」ともやっていたと知って、それをずっと続けてたら、それは咲も舞亜を求め続けてたということだよなと。

主人公と咲の、歪すぎる関係。

この歪すぎる関係のままでは、付き合ってハッピーとはならず、どこかで破綻する。そのために、この2人のことが大好きな舞亜が、最後までかき乱す必要があった、というのも筋道として綺麗だ。

・1人で背負わず、2人で罪に向き合い、いっしょに舞亜を銃つシーンは、儚く美しい。そのあとの舞亜の「ーーほんと、いつまでも世話が焼けるんだから」の嬉しそうな一言が印象的。

・全√のなかで唯一舞亜と明確に別れを告げれたルートなのも好きだったな。

舞亜

・バッドエンドだが、幸せすぎるEND。どうしても短すぎると感じてしまったが、2人が一緒に堕ちることに、物語的な起伏なんて起きようがないわけだから、当然か。

でも、短いなかに、舞亜の魅力をたっっぷり感じるシーンが多かったのはよかった。CG豪華だよなこの作品。一緒に抱き合って沈んでいくシーンも、上記のシーンも、大好き。

・Trueをふまえると、この舞亜は、また主人公が自分にとらわれるようになった状況を恨んでいるわけで、そうなるとこの「一緒に堕ちる」このルートの抱える重みが増すよな。その締めが、上記の膝枕のシーンとセリフなの、すごい。

舞亜、好きだ・・・。

 

有栖(True)

(有栖の泣き顔CG、いい表情だよなぁ・・・。)

・いままでの各ルートでばらまいてた、有栖(有子)周り、舞亜周り、この世界について、などの伏線を綺麗に回収しながら、ストーリー展開もドラマチックで、まさにTrue。

・最初の方で、自分がTrueに対して、尖っていると思っている話は述べており、それ以外のことについて軽く書こうと思う。

・主人公の抱える問題点に踏み込む話が多く、いままでの主人公の行いに納得がいった。

どのルートでも超奥手野郎すぎて、それをお決まりのネタとした逆ハーレムコメディ描写がたびたびあったが、なぜ主人公がそれになびかないのか、を明示してくれたのがうれしかったな。

序盤で、恋人をなぜ作らないのかに対し、「大事な相手をこれ以上増やしたくない」と。そして、中盤において、「まだ恋心と家族愛の区別がつかないままに、めちゃくちゃな別れ方をした。咲ちゃんの手助けもあって、キミは夢の世界の行かなかったけれど、かわりに、恋心への決着のつけかたもわからなくなっちゃった」と主人公の中身に迫っていったのが、よかった。

・夢か現実か、の話としては、咲をやってたときはこの咲ルートのミスリードが一番びっくりするポイントなんだろうな~と思ってたんだが、Trueでこれみたときに「まだ上があんのかよ」とたまげた。驚愕の最大瞬間風速はそりゃココ。

・主人公の成長、克服、舞亜との共存。

主人公が、有子の影響にて、何度も何度もやり直させられたことで、副次的に成長し、トラウマを乗り越えたの好きなんだよな。

他作品の話になるが、リトバスの理樹は、バス事故の状況を解決できるレベルになるまで成長するために学園を繰り返させられてた。この構図に一部が似てるなって思ったんだよね。こちらは有子が自分が夢の世界を楽しむために繰り返してたら、巻き込まれた主人公が成長してたって感じ。

これにより、いままでは舞亜をみないように切り離そうとしてたところを、夢を夢であることを認めたうえで、夢を現実と勘違いして逃げることがなくなったうえで、舞亜と一緒に歩めるようになったのが、とにかく読んでてうれしかった。

一緒に夢で沈んだ舞亜ルートでも、お別れを選んだ咲ルートとも違う、舞亜との解決の仕方。

そして、いままで不吉の象徴でしかなかったあの植物をこうして使って、乗り越えたことが明確に伝わる上記のストーリーとCGが、美しすぎる。

・でも、この作品で一番好きなCGは、これなんすけどねやっぱ。

いままで舞亜がやろうとしてたけど主人公が拒んでいた「夢からの記憶、思いの改ざん」を、自分が使う。『だってその方が間違いなく良いと思ったんだ』と。

Trueのこの決断をしまくる主人公、かっこよすぎだろ。そして舞亜と同じわっるーい笑み。感謝。

・この主人公の有子と有栖に対する行動についてどう感じたかと、これってすげー尖ったことやってるよね、に関しては、冒頭に触れた通り。

この最後の「有子のなかに有栖がいるとわかる」CGは、マジで「粋」だった。

感動の物語を、ありがとう。

 

おわりに

ハピメア、まーじでやってよかったわ。

Purple softwareさんの作品は、いままで『ムーンゴースト』と『何度目かのはじめまして』というここ最近に出たミドルプライス2本しかやったことがなく、そのどちらも面白かったから、Purple softwareの代表作と呼ばれてる本作をやってみようと思って手にとったんだよね。今度ロゼにPurple softwareが来るからというのもある。

やっぱ名作と呼ばれてるものは、名作たる理由があるわと実感した。

この熱が冷めぬうちに、ハピメアのFDもやろうと思う。

おわり。

単巻完結漫画で1番好きな『外天楼』について語る

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『それでも町は廻っている』や『ネムルバカ』などで有名な石黒正数による1巻完結漫画、『外天楼』。自分はこの作品が1巻完結漫画のなかで1番好きだ。 

(概要 引用)

外天楼と呼ばれる建物にまつわるヘンな人々。エロ本を探す少年がいて、宇宙刑事がいて、ロボットがいて、殺人事件が起こって……? 謎を秘めた姉弟を追い、刑事・桜場冴子は自分勝手な捜査を開始する。“迷”推理が解き明かすのは、外天楼に隠された驚愕の真実……!? 奇妙にねじれて、愉快に切ない――石黒正数が描く不思議系ミステリ!!

 

まず、この作品を最大限楽しみたい人は、『外天楼』は1巻だけなんだから、とりあえず一旦読んでから下記をみて欲しい。

はじめに 本作について

本作は、短編コメディを読み進めていたら、それはあくまで長編SFの1パーツにすぎなかったというギミックと伏線に驚かされる、そんな作品だ。

石黒正数は、コメディもシリアスもどちらも描くのが上手い作者であるが、本作はそのどちらの温度感も、調和も、素晴らしい。

初見で、いままで(いい意味でくだらない肩肘張らずに読める)コメディをだらだら読んでたのに、急に訪れる【転】でのゾクゾク感。そしてそこからのシリアスと、最後の結末に唖然。読了後、伏線を確認し直そうとまた1から当然読み直したくなり、いざ読み直すと想像よりはるかに伏線や必要な描写が貼られていたことに気づかされ、どんだけ技巧的に『上手いんだよ』と思わされてしまう。  

漫画1巻だけって表現できる範囲が非常に狭い。その限られたページで思いをどう描くか・どう訴えてくれるか、そういう楽しみ方ができる単巻完結漫画がぼくは好きだ。 このページ数で、ここまで「散らして」ここまで「回収して」ここまで「まとめあげる」この『外天楼』は、名作すぎるだろ。

こっから先は超絶ガッツリ内容そのものに言及するネタバレになるので要注意(まだ未読で、ここまでの俺の煽り文句でちょっとでも興味が沸いた人でまは、まだ間に合うから『外天楼』を今すぐ読んでから下記を読んでくれ。)

各話ごとの描写ポイント

各話ごとの感想ではなく、各話の全体のテーマにおける立ち位置や伏線について述べる。

表紙を捲ってすぐ

・半透明紙を使って、鼻眼鏡と鬼口を描く。本作をめくってすぐ(いい意味で)くだらないギャグが表紙を捲った直後にあり、第1話からはじまる短編ギャグコメディに違和感を覚えないようにしながら、ここでこれを見せたことでこの物語の転に当たる第7話扉絵で再び鼻眼鏡をみたときにゾクっとさせられる。

第1話リサイクル

・エロ本を通じたコメディ。かつ、本作の根幹であるアリオ、キリエ、芹沢登場回。

・本作の大きな問題となるテーマの「性」を、まずギャグとして見せている。

・エロサイトのブロックを通じエロ本を探す物語であり、「エロの規制」を会話で出しており、第1話の動機の発端である⇨第5話の犯人の動機の発端も、「エロの規制」である。

・表札にて鰐沼家がB312号室であることを示す⇨今後のキリエがB号棟ではない箇所でうろついている際の違和感をもたせる工夫を既にしている。

・キリエ初登場時から「アイス」を食べていることがわかる。以降、各話でキリエが初登場するときは基本「アイス」があるのだが、第5話のキリエ登場時は「アイス」がないのがポイント

・結末を知っている上で1話を読むと、レイプされてアリオを産んでいるキリエの目の前で、アリオたちのエロコメディが繰り広げられてるのが、むごすぎる。

第2話宇宙刑事VSディテクト 

・アリオたちがあのときから10年経過してることを明示。第一の男3人のうち2人をだすことで、もう1人(芹沢)はどうなったのかと今後気にさせる。

・本作のテーマであるロボットについて、まず「ドラマのなかのロボット」という形でロボットを出すことで、第1話の日常からの違和感を感じさせないで全体のテーマとなるロボットを出せており、第3話に繋げている。これにより、高機能ロボットを出しているのにこの時点ではSFと気づかせない。第2話最後の刑事の取り締まりパートでも警官ロボットを描いていないことから、徹底している。

・ドラマ内の殺人の犯行動機が「主人公の秘密をネタにゆすられてる」ことにある⇨第8話のアリオによる芹沢殺害も、芹沢からの鰐沼家の秘密をネタにしたゆすりである。

・第2話最後に出てくる刑事はヤマさん⇨アリオが10年経過した段階で出てくるヤマさんの外見年齢と、以後のヤマさんの外見年齢は同一⇨このヤマさんとキリエが同時に出てくる第4話において、キリエの年齢の矛盾に気づけるようにしている。

第3話罪悪

・芹沢が「キリエを造る」ためにロボットの感情の研究をしているという丸々伏線の回。

・第3話でゴリゴリにロボット刑事や人間にしかみえないレベルのロボットが出てるのに、第2話の「ロボットが出るドラマ」を挟んだことで、現代風日常からロボットありのSF話への違和感を感じさせなくなってる。

・キリエが1話以来の登場。アイスあり。良く見れば学生服であり歳をとっていない(がアリオが大人である2話とこの3話の年代経過の繋がりがまだわからないのでこの時点ではキリエの年齢が幼くてもまだおかしくはない)

・女ロボットの型番がP99S⇨第5話にてPシリーズがでるため型番から今後の作中内の大まかな年代感がわかる

・第5話の容疑者の1人である河森が芹沢と共にいることがわかる。

第4話面倒な館

・第2話の最後に出た刑事がヤマさんという名前だと判明&冴子登場回。冴子の各事件における"迷"推理は、最終話まで物語を動かす軸となる。

・ヤマさんと冴子が76ページ目でC号棟にいることを示す⇨つまり「C号棟」でキリエと遭遇している(鰐沼アリオ家はB号棟。ガクト家がC号棟。)⇨さらにここのキリエは新人である冴子に「あの子」呼びされており見た目も変わっておらず明確に子ども扱いされている⇨ここでヤマさんも出てくる第2話でアリオは10年経過して大人になってるのに、キリエの変化は見た目が変わってないという矛盾を、この時点で明確に示していたことがわかる(アイスも当然食べている)。

・下井がフェアリー社に勤務していたという情報の提示。

第5話フェアリー殺人事件

・いままでのロボットに加え、フェアリーという人工生命が読者目線で初登場。

・開幕のキリエは「アイスを食べていない」。このときのキリエの服装と構図に着目⇨最終話のアリオにバレた「...ごめんね」と完全一致⇨すなわち、ここはアリオが鬼口を殺しに出発した直後のところ⇨このときにもうキリエはすべての鰐沼家の秘密が露見している段階である⇨ここでアイスを食べていないから最終話での顔のひび割れと別れも起きている。

・ロボットの型番で、P101CAが出ており、第3話の研究中のものがP99Sであることから第3話から地続きで時間も経過していることがわかる。

・このページでナレーションで女性蔑視につながると性処理ロボットのように展示されているロボット群は、芹沢の発明である⇨芹沢は第8話で性処理目的でロボットを作っていると明言しており、後に本来の目的はそもそもそれだったこともわかる。

・討論も含めロボットとフェアリーという「人工生命の性消費」という本作と切っても切り離されない話題をここで初出し。第6話の諸葉の犯行動機も、芹沢の目的も、アリオが生まれた原因も、すべてこれが原因となっている。

・鬼口のいろんな読み方ができてしまうダイイングメッセージを、冴子の迷推理によってギャグとして描く⇨ミステリーにおいてわかりにくいダイイングメッセージの解釈は定番の様式美でありギャグとしても描かれているので違和感がないが、そもそも何故わかりにくく書いたのかは、最終話にて鬼口の鰐沼家の隠蔽におけるミスリードのためとわかる。ただの様式美とギャグのやり取りのためと思わせてのこれが見事である。これを踏まえると本話オチを「ダイイング・メッセージはわかりやすく書こうね」としていることが凄いのだ。

第6話容疑者Mの転身

・冴子とヤマさんの「故郷作戦」をギャグっぽくここで出す⇨第8話でも再び冴子がアリオに故郷をきくことに⇨それによりアリオの超名シーン「生まれはC404号室だ」で一気に温度感が変わることになる。

・諸葉が上京してすぐみたのはP100SLO。第3話のP99Sから数えてすぐである。

・諸葉の行動原理である人工生命とのエロ。しかしロボットのエロ規制、フェアリーのエロ規制、これを経て諸葉が今回の犯行をおこしたことが描かれる。(1話でもエロの規制⇨エロのための行動を描いている)

・諸葉が女性従業員ロボットを人間と勘違いして刺してしまい、「人間そっくりじゃなかったら勘違いしなかった」と述べるが、この世界の女ロボットは、芹沢が性のはけ口として人間に出来る限り近づける過程で発展したものなので、当然なのである。

第7話鰐沼家の一族

・第6話の結末の芹沢の死の判明が、この本における起承転結の転であり、この第7話から一気にいままでの伏線と短編エピソードを回収し、一冊の長編SFとしての結へと向かっていく。

・扉絵の鼻眼鏡、表紙すぐの鬼口がかけていた鼻眼鏡が、鰐沼家の表札のドアに描かれているのは、ズバリであり、最初ギャグだと思ってたのをこの表現で使ってくるのが恐ろしい。

・捜査により、鰐沼ガクト、アリオ、鬼口がつながっていく。

・キリエのアイスの回収、キリエが歳をとらないことを回収。

第8話キリエ

・冴子の故郷作戦により、この作品の1番の仰天のネタである「アリオの出生」が暴かれる。この「生まれはC404号室だ」のページのアリオの表情の変化とセリフが、なんどみても、凄い。この作者のシリアスへの変転がうますぎる。このページの初見のときの驚きが、個人的には本作の最大風速ポイントだった。

・いままで出てきていた芹沢が、1話のときの友人の1人と読者に明かす。芹沢のすべての行動原理の開示。下井の回収。そして、C404号室の中身とキリエの正体の開示。

・ロボットの自殺を描き、「様々な矛盾を時と場合によって出したり引っ込めたりしながら、厚かましく生きていられるのは、人間だからだ」で第3話の回収。

最終話アリオ

・アリオがどう出生されたか、鰐沼家の謎をすべて回収・開示する。

・本作の登場人物で、(外国人やロボットやドラマのキャラを除いた)日本人の下の名前はアリオとキリエ以外全員きちんと漢字の本名である(ガクトは偽名)。キリエは鬼口桐江の細胞で生み出されたフェアリーでる。アリオはフェアリーと人間の子どもである。鬼口の研究材料であったことを鑑みれば、カタカナの名前であったことも理由がある。

・「お前だアリオ」トラウマシーンとしてめちゃくちゃ有名。外天楼といえば、の代名詞のシーンだ。

・芹沢が秘密を暴き、アリオを脅し、脅されたアリオが芹沢をころす。2話のドラマ内の展開と同様。

・5話ダイイングメッセージがわかりにくかったことを回収。

・「姉ちゃんは、何のために生まれたんだ」⇨最後のアリオとキリエの逃避行における、キリエの回想。⇨回想内のアリオの笑顔⇨アリオはキリエの弟でもあり、子供でもある。アリオのための冴子の殺人からも、このアリオを思った回想からも、「アリオこそがキリエが生きている意味だった」ことがわかる。

さいごに

ここでは、いかにこの漫画が単巻という限られた中で、どれだけ技術的に上手い作品なのかを示すために、各エピソードごとの全体における伏線や立ち位置といった主にギミック面の解説をしてきた。

この作品の凄いところは、このギミックの面白さは作品の面白さの1ピースにすぎないことである。

これだけギミックを限られたページ数で緻密に描きながらも、「各短編のギャグの面白さ」や「人間と人工生命における権利や性といったSF倫理というテーマの点の面白さ」もきちんと描かれてるのだ。第5話のダイイングメッセージにおけるギャグが、個人的には特にお気に入り。ポイント制になったところがやばかったね笑

いままで単巻完結漫画は色々読んで来たが、個人的に単巻完結漫画のなかでこれを超えるものはないと思うぐらい好きな作品だったから、いろいろ語らせてもらった。みんなも是非よんでくれ。

 

おわり。

 

イハナシの魔女 Append 感想

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イハナシの魔女 Append(本編のエピローグにいたるまでの一年間を書いた短編小説)の雑感。短編小説なので、さくっと思ったことだけ書きます。

ネタバレ全開なので以後注意。

・前半は、本編で気になった各キャラの関係の補填や掘り下げのためのエピソード

本編ではストーリーの都合で深堀すると横にそれてしまうから描写するのは難しかったけど、考えてみると本編中気になるよねって人間関係の箇所を、本編後の出来事において補填していた。

例えば、本編ではキリコ→アカリの矢印が多く描かれてたが、アカリが東京に行く前に兼城に対してキリコを助ける1手を仕込んでて、きっちりアカリ→キリコの矢印もあることを実感させられたり。

本編での兼城のアカリへの行い自体は、アカリの執事に雇われていたとはいえ冷静に問題のある行動ではあったわけだが、兼城からアカリへの謝罪があったことを示したり。

 

個人的に1番描いてくれてうれしかったのは、紬と信士の会話を経て、祖母との関係について知ることができたこと。

2章で紬と祖母の感動の話を描いたあとに、3章で紬の正体が判明するわけじゃん。そうなると3章プレイ中に、「祖母は紬の正体しってたわけなんだよな」となり、2章のときに抱いてた感情とはまた違う思考感情が自分のなかで生まれるわけで(勿論、リルゥによって死後の祖母と紬の会話があったわけだから、祖母は紬のことを大切に思ってることは間違いないんだけど)。

このアペンドのおかげで、やっぱり祖母にとって紬は生きがいだったんだな、と再確認できたのが、個人的にはうれしかったな。

信士が紬に対してきつめにあたってたのにも理由がわかったし。

 

こういう本編でまだ気になるぞ~って思ってたそれぞれの人間関係について、補填がなされてよかったな。

・後半は、リルゥと主人公の、思いあい。

双方が双方の成長を不安に感じる。

「おいて行かれるんじゃないか」という不安の裏表をどちらも背負う。

2人の共通点である「前の家族に捨てられた」というのに、縛られているから。

でも、それはお互いがお互いに思いあっているから生まれる発想。相手に見合う自分になるように、切磋琢磨して成長をしている。

家族に対して悲しい過去をもつ2人だからこそ、お互いに思いあって成長していける素敵な家族になるんだなと感じられる、素敵なお話だった。

 

・サブキャラのイラストもみれるんですが、これみてから本編プレイしたかったな笑

 

おわり。

 

 

イハナシの魔女 (fragaria) プレイ感想

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家族に捨てられ、沖縄の離島にたどりついた主人公光が、不思議な少女リルゥと出会い、共同生活を送る。離島文化や魔法によって心を通わせる物語。

主要人物のこと全員が好きになる。セカイの謎がどんどんと提示され物語を読む手がとまらなくなる。社会から隔絶された主人公とヒロインの2人が圧倒的な不合理をはねのけて人との繋がりにより結ばれる気持ちの良すぎるボーイミーツガール。そんなお話でした。

以下ネタバレ要注意。

各ルートごとに感想を書きます。

■プロローグ

主人公とヒロインが一緒に住むまでを描く。

沖縄で青春スローライフボーイミーツガールものなのかなと思ってはじめたら、いきなり野宿スタート&蛇喰いスタートで、「おいおい、ボーイとガールがミーツする初対面で、こんなぶっとんだ始まり方、僕の辞書にはないぞ」となりさすがにおったまげた。つかみのインパクトでかすぎね。

「隔絶された2人が一緒に住む」っていうの、そんなん読んでて気持ちよくなるにきまってるやんってのが素直な感想。主人公が「俺は一人が寂しかったんだと思う」と心のなかで振り返るところや、ヒロインに対し「でも、世の中、悪い奴ばかりでもない」という、この家族関係で傷ついてる2人が距離を狭めていく最初の過程が、みててほほえましく、あっという間に読み進めれた。

犬を助けたくだりは、正直主人公の行動原理がよくわからなすぎて、そのあとのリルゥの言い分が正論すぎて、「なんやコイツ」と思ったけど、この主人公の性格・行動については、保険販売員編で紬に「ガツン」と言われるので。

リルゥ「・・・奴隷商には」光「売らない」

のこのくだりも、のちのヒロインといったんわかれることになるときに大事なる会話の1つ。

このルートで個人的にかなり大事だったなと思うのがこれ。

ヒロインは、家族のために魔女になったのにも関わらず、その家族すら魔女であることを怖がっておりこの地によこされたし、魔女が畏怖の対象であることを当然と思ってる。そんななか、主人公がヒロインを「怖くはないだろ」とさらっと言ったの、そら惚れるだろ。

■アカリ編

・親と子供の夢との、確執、対立、対話、 和解。このテーマ自体はよくあるが、① 離島の因習という独自性に加え、②アカリが自身と比較しているのが「独立してる主人公とリルゥ」であり、「主人公とリルゥが現代日本の外れ値すぎる」というこの2点が特殊。「アカリが世間を舐めてるわけでは決してなく、アカリも超頑張ってる」ということが、このテーマを描く上でよかった。

・まず沖縄や島のスローライフ日常物みたいなのが自分はかなり好きなので、その生活をみてるだけでも楽しかったな。

・アカリの、主人公への恋心の描き方が好き。物語の作りとして、リルゥが変身をして祝女になるアカリの代役をする、という流れで、アカリがオーディションにいくまでの間主人公と同棲する流れにするの、シナリオ天才すぎるだろと。

好きポイントが2つあって、1つ目が

あかりが主人公のことを意識しているのを自分でもわかっているけど、あかりのキャラクターとしてのおちゃらけが、恋としては悪い方向に進んだとこ。ここでリルゥの気持ちがわかり、あとで主人公に対してリルゥのことをきいたときに、2人が両片思いであることを知ったときの、あかりの気持ちよ。

で、2点目が、海辺での告白。

真正面からの告白ができなかったとしても、「あかりに変身したリルゥのふりをしたあかり」による、告白。告白するに対して、重たい鎧をつけてるんだけど、告白は告白。甘酸っぱすぎる名シーンだった。

・共通の段階では主人公のこと好きになれないかもなって思ったんだけど、このルートは主人公がかなりかっこよかったと素直に思う。

このアカリが精神的に弱ってるところにきちんと気づくところもそうだし。あと何より、アカリの親と話し合うところ。親がしんで自立している主人公だからこそ言えるセリフだったのが、この主人公じゃなきゃ言えないセリフで、かっこよかったな。

・このアカリの夢を描きながらもこの島の因習の不気味さ・不可解さについてがっつり描き、伏線も大量に出し、世界観への謎が増した。特に最後のリルゥの儀式のときにあったエピソードの語りにより、「はやく続きをみさせてくれ!」という気持ちにさせられた。

思い返すと、祝女について祖父にきいた際に「祝女が選ばれることがまずい」というのは、祝女が贄ということを知っているだけでなく、贄が必要なぐらい愛した女に限界が近かったからこそのまずいなんだよなと。

■保険販売員編

・「他人との比較」「幸せとはなにか」

立派とはなにか、紬の他人に比べてできない劣等感による卑下、リルゥが語る他人と自分を比較したら他人のほうが優れている点なんて必ずあるというセリフ、紬の祖母のいうもっと失敗ばっかの人をいくらでも見てきたというセリフ。

幸せを語る上で、生きる上で、比較の必要さも、不要さも、どちらも描いている物語だった。「下を見れば世の中にはキリがない」。「上を見ても、自分より優れている人は必ずいて、キリはない」生きている以上、人は比較をせざるを得ないが、その比較にがんじがらめに縛られるのは、よくない。

このセリフを言えるのは、人生を全うした死者である祖母だからこそいえる素敵なセリフだなと思う。生きていて、比較し落ち込むことばかりの人生だけど、いつか自分もこういう風に言える人間になりたい。

・主人公の問題性が、露見する話でもあった。

主人公の「人の感情に触れるのが怖い」ということがよく出てきており、リルゥともトラブルになる。いままでこの物語を読んでて、主人公に対して感じてた違和感が、どんどん露見していくことに。リルゥが「あたしのことも見て」と、もうズバリなセリフを言っても、そのメッセージにまっすぐ向き合えない(その理由も、リルゥ編で明らかになるが)

この問題でめちゃくちゃびびったのが、これ。主人公のことを「ピエロ」と表すところ、いままでの紬像からは考えられない、切込みすぎるセリフで、最初読んだときさすがに声でたね。

・このルートで一番好きな文章はこれ。リルゥの主人公への愛の気持ち(デザート)を、薄暗い心の奥底(冷蔵庫)に仕舞う。薄暗い気持ちには、紬への嫉妬がある(冷蔵庫の半分を占める、紬が買ってきたビール。紬を、どかしたい)。

あまりにも、美しい。こういう綺麗な比喩表現をみると、物語を文で読む醍醐味を感じる。

・こちらも物語の最後で、紬の過去の記憶の回想が断片的に入り、次を読む手がとまらなくなる。

 

■リルゥ編

いままでの主人公の症状、リルゥの故郷や目的、因習など、すべての伏線を回収。

日常の話が壊れていき、セカイ系のような雰囲気になっていくのが、たまらないね。

そのなかでも、みんながリルゥと主人公のために行動を起こすところや、リルゥと主人公のボーイミーツガールの美しさという「人」の物語を、最後まで綺麗に描き切ってくれたことに、感動する。

・リルゥはなぜ魔女になったのか、なぜこの世界にきたのか

リルゥが、どれだけ役割を大事に思ってきたか。魔女がどれだけ恐れられる存在だったのか(家族のために魔女になったのに、家族からも避けられる描写)、家族に売られた様子、家族と一緒に暮らすために戦士を目指し単身で異世界にきた。

この凄惨な過去により、リルゥの奴隷発言、売らないのか発言の、重みが増す。

・主人公の過去と、なぜ「向き合えないのか」の開示

主人公がいう自分が「欠陥人間」だという根拠。心の病気。「好きな人に近づいたときに、目が見えなくなる」というもの。原因は、多岐にわたる。両親の死、叔母による虐待etc... 。これにより、主人公は「諦めを覚えた」。感情を動かさなければ、発作はでない。何もしなければ、そのままである。

これが、紬が主人公のことを「ピエロ」と評するに至った原因。

それでもそれが再発してしまった→リルゥのことが好きすぎるから(ここが最高なんですよね~)

これを踏まえて最初を振り返ると、ここまでの状況である主人公がつながりを欲して、リルゥを一緒に暮らし始めたというのが、人間のつながりの大切さをよくあらわしていると思う。

保険販売員編では、主人公は、紬に対し、ノートにばかり従ってなんで自分で考えないのかと述べていたが、そのノートを主人公は破けず、リルゥが破いた。それは、主人公も、自分で考えたってうまくいくはずがないと、紬と同じ思いを一部抱いていたからである。このように、この開示によって、いままでの主人公の行動に一気に自分は理解が進んだ。

きちんと言えたじゃねえか、おめえ。このシーン大好きなんだ。

・圧倒的な不合理、からの、不合理への抵抗、感動の物語。

いままで不幸なことだらけで、家族に売られたということもわかり、そんななかようやく愛する人と一緒になれると思ったのに、変な神にとりつかれ、外も歩けず、イキガミ様になって閉じ込められようとしてる。

そして、友人たちをのぞいた島の人間たちが敵になって追い詰めていく描写も、心に堪えた。

読んでいて一番苦しくなったのがこれ。ようやく主人公が「呪い」を振り切り、リルゥに告白できたこのタイミングでの、魔力が切れ翻訳魔法が途切れて告白が聞こえない。

・・・・・どんだけ、どんだけ不幸にさせるんだよ。

ここまでの仕打ちの展開、泣かないわけないだろ。

そこからの、別れ。いままで裏切られ続けてきたリルゥが、主人公と別れ、大里家にいく、この展開。惨すぎるだろ。

でも、ここまで不合理を見せつけたからこそ、ここからの感動のカタルシスがやばい。

いままで主人公もリルゥも、社会からはじかれていた存在だった。でも、この島で一緒に過ごすうちに、主人公もリルゥも、大切な友人とつながることができた。

その友人たちが、主人公たちのために行動をする、王道展開。

呪文がなくてもイメージで魔法を行使できる伏線の回収、主人公と祖父・祖母の関係による主人公の魔力の回収、紬編でやった魔法をここで主人公が使う展開、

そして、

この、感動のCG。大好きすぎる。言葉が通じなくても、壁があっても、2人はたしかに通じているんだよ。このCGが、このゲームで一番好き。

ここまで、ありえないぐらいの不合理を、不幸を描いてきたからこそ、「不幸を許すな」「運命を許すな」という言葉が、響く。

そして、一人の女のためには、世界なんていらないという覚悟。

リルゥにあうまで「諦めていた」主人公が、リルゥのためにこの決断をする。最高の、愛の物語だった。

この異世界語での告白のやり直しが、ほーーーーーんまに、好き。

 

■TRUTH

本編終了後に、作品内のより詳しい設定だったり、結局夜の眷属とはなんなのかや、島とニライカナイの貿易や、なぜ最後クロテズリは一生人間から昼を奪わなかったのかの理由などを開示するTIPS。

ボーイミーツガールとしてだけでなく、この世界観の設定そのものがおもしろい作品だったから、設定の奥深さを味わえてよかった。

たしかにこの「自分がどうしたいか」が、まさにこの作品で1番大事なことだったなと思う。

■おわりに

イハナシの魔女、本当にやってよかったです。

この短いゲーム時間に、濃密なセカイ系ボーイミーツガールが詰め込まれてた。

このゲームですごいなと思ったのは、最初にも書いたけど、主要人物のことが全員好きになってること。

当初主人公の人間性に疑問を感じていたが、リルゥ編で事情がわかり最後の決断で当然好きになるし、紬も保険販売員編ではなんでこいつこんな常識外れな行動ばかりしてるんだと思ったが、そりゃこの世界の人間じゃないからだしリルゥに対して「使命なんて関係ないんだよ!」と告げるところは感動した。ほかの人物もみんな、最高にアツかった。

これが面白すぎたから、fragariaさんのゲームほかにもやりたいとなり、ステラーコードもプレイしたんですよね(先日、ステラーコードも感想を書いたので、よろしければ。https://souraikarina5g.hatenablog.com/entry/2026/03/09/173417)

イハナシの魔女 append(後日談の小説)も読了済みなので、近日中に、そちらの雑感記事も書こうと思います。

おわり。